変身活動家 江上喜郎

変身活動家・江上喜朗が不定期に更新しているブログ。事業承継に関する考察や経営ノウハウ、実際の事例などについてまとめています。書籍では書けなかった部分まで明かしていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

第9回2018年4月2日

教習所経営は、高校数学で答えがでる。Vol.3 〜教習生の満足度のメカニズムとは?〜

顧客満足度X6は、以下のような要素でてきています。

 

X6=X6①(実用的な満足度)+X6②(内面的な満足度)

X6①(実用的な満足度)=いかに短期間で卒業できるか?

X6②(内面的な満足度)=技能教習+学科教習+休み時間

 

それぞれ、細かく見て行きましょう。

 

X6①実用的な満足度

 

 実用的な満足度は「安」「近」「短」で表されるが、営業利益Yのために注目すべき数値は「短」だ、という話は前回申し上げました。「短期間で取れるか?」「ストレスなく乗れるか?」という実用的な価値は教習所において今も昔も、最も重要な要素になります。喫茶店などで高校生、大学生の会話を聞いているとたまに教習所の話題が出て来ますが(こういうところで話されるのが本音だと思いますが)「お前どのくらいで取れた?」「3ヶ月」「え、そんなにかかるの?」といった会話になることばかりでしょう。生徒さんから見たら「短期間で取れる」ことは教習所からすると「回転力がある」と同義です。そしてほとんどの教習所は指導員数が回転力のネックになっていると思います。採用して増やすことや、複数教習の数を増やすなどによる改善は可能ですので、そういった手を打つことが大切になります。

 

X6②内面的な満足度

 

技能教習

 技能教習においての満足度は、ズバリ「指導員と生徒さんがどんな関係を構築したか」です。教習所を経営する方には釈迦に説法ですが、技能教習の中身自体は明確に定義されており、逸脱したことはできません。また逸脱したら卒業が遅れ、上記の「実用的な満足度」が毀損されます。伝える中身自体は規定された中で、伝え方であったり、他愛もない雑談であったり、関係のない相談に乗ったり、のコミュニケーションを通じた「関係性による満足度」がほとんどになります。そのニーズは一人一人違います。そして技能教習のように1対1の空間であれば相手は自分に合わせることを求めます。従って「聞くこと」「気づくこと」などを起点とした“相手に合わせるコミュニケーション”がこの満足度を上げるポイントになります。

 

 学科教習

 一方、学科教習は技能教習と違い、1対Nです。関係性はあまり重要ではない、というかそもそも創ることの難易度が極めて高くなっています。どちらかというと学科は(指導員が)「伝える」→(生徒さんが)「見る」という一方的なコミュニケーションになります。ということは、「見ていて楽しい」というのが現実的な価値になります。こちらも技能と同じく伝える中身は規定されていますが、「どう伝えるか」というところに自由度はあります。「楽しい」というのは、funny(笑いとして面白い)とinteresting(知的に面白い)の2つの価値があります。両方重要ですが、免許を取りに来る18歳から22歳の年齢層の人は科学番組よりバラエティ番組を見ることが多いように、この年齢層においてはfunny寄りにした方が全体の満足度は上がります。

 

 休み時間

 休み時間の満足度をあげようとすると、「イベントをしよう」などと陥りがちですが、よっぽどのイベントでない限り、そのイベント自体が満足度に影響することはありません。瞬間的に満足度が上がっても、その教習所に15日程度は通うわけで、「非日常」です。ソファの居心地が良いことや、wifiが漫画などのエンタメが揃っていること、飲食ができることなど、非日常を彩ることでなく、「日常を少しずつよくしていく」ことが大切です。

 

 

 以上が「満足度」の構成要素です。これらを高めていけば、ボディブローのように入校シェアは上がって来ます。自動車学校はリピートがないので満足度は関係ない、というのが通説ですが、高い満足度は家族や友人などに確実に伝達され、そして他校の噂と比較され、じわじわと広がり、確実な数字となって跳ね返ってきます。実際に当校(南福岡自動車学校)においても満足度と入校生数には時間差により確実な相関があります(下図参照)。どの教習所においても、おそらく人気を集めている(募集が多い)指導員は最初に満足度があがり、そのあと募集があがっているでしょう。「継続は力なり」という言葉がありますが、教習所の経営においては、上記の説明変数を意識した継続は、力でなく結果を生むことがわかります。

青:南福岡自動車学校入校シェア(対周辺4校、右目盛り)

赤:南福岡自動車学校顧客満足度指数(顧客「感動」割合、左目盛り)

 

 

 

 

精神論でもなく、観念論でもなく、顧客の満足度は入校シェアに、即ちビジネスに、現実論として大きく関係しています。それも長期的に、じわじわと。

 

会社を伸ばしていく、あるいは斜陽の中でも生き残っていくのが目的なのであれば、満足度を上げていくことは、唯一そして絶対的な手段です。そこから逃げることは、できません。誤解を恐れずに申し上げます、教習生の満足度を高めれば、教習所の経営は8割成功します。

 

では、満足度を上げるために、何から始めたらいいのか。

社員教育なのか?奇抜な戦略なのか?愚直な努力なのか?

 

・・・全て違います。

 

順序を考慮せずにやみくもに手を打っても、決して状況は改善されません。砂漠に水を撒いても、一向にオアシスはできないように。砂漠にオアシスを作るには、まず水が溜まる器を作ることから始めないといけません。

 

次回、教習所経営は高校数学で答えがでる Vol.4 〜「人材育成は、するな。」〜