変身活動家 江上喜郎

変身活動家・江上喜朗が不定期に更新しているブログ。事業承継に関する考察や経営ノウハウ、実際の事例などについてまとめています。書籍では書けなかった部分まで明かしていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

第11回2018年7月26日

教習所経営は高校数学で答えがでる Vol.4 〜「人材育成は、するな。」〜

私は社長になった後、とにかく社員とコミュニケーションを取りました。ミーティング然り、社員研修然り、個別面談然り、飲み会然り・・・多い時は、週の半分以上は社員と飲みに行っていました。傾聴し、気遣い、そしてビジョンを伝え・・・120人いる社員に対して、気が遠くなるほど研修やコミュニケーションの時間を取りました。

 

結果、社員の考えは変わらず、半分の社員が辞めました。

 

もちろん、辞めたのは私のやり方が悪かった、器が小さかった、などの理由も大いにあるのでしょうが。面談をしていた社員の頭の中にあるのは、以下のような考えだったのではないかと思います。

−労働者と経営者は別で、経営者は労働者から搾取して、お金をたくさん持っている。

−厳しい教習をして安全なドライバーを育てるのが全てだ。笑いや暖かさを入れるなんて無駄だ。

−成果主義だって?会社は年功序列で社員の人生を保証するものじゃないのか?

 

上の考え方は間違っていません。逆に、産業革命後の高度経済成長時にはとても効率的な考え方だったのだろうと思います。この考え方が社会を発展させたとも言えるでしょう。ただし問題は、①時代の変化とともにニーズは縮小し、変わり、その考え方の合理性が薄れてきていること。②それにも関わらず、人間の考え方が変わらないこと。この2つ、特に後者にあります。

 

例えば20年会社に勤めてくれた42歳の社員は、20年間、「その考え方が常識だ」「それ以外はない」と教えられ続けてきました。20年です。過去の自分を否定して、「目の前のこの若造がいうことを信じよう」と心から思えるはずがありません。感情論だけでなく、物理的にも、既存のシナプス(脳神経回路)の完成度が高いほど、新しい回路を脳内に作るのは高コストなのでしょう。金融業界の人ほど仮想通貨のことがわからないように。

 

辞めていった社員たちが悪いわけではなく、真の原因は、合理性をなくした古い考え方を信じさせたマスコミ、教育機関、会社にあります。ただ、経営サイドからみると「だから変わらなくて良し」とは言えません。他人のせいにせず、主体的に会社を変えていく必要があります。大事なのは、違う常識を持つ人に、「教育やコミュニケーションを通じて人を変えよう」ということが効果的ではない、砂漠に水を撒く行為だ、と理解することです。

 

社外には、笑いや暖かさの大切さをわかり、成果主義でないと社会は成り立たない、と心の底から思っていて、それが「常識」になっている若い人材がたくさんいます。その方向に会社を変えていくには、そういった「新しい常識」を持つ人を多く採用することがもっとも近道です。そしてその採用を続け、「新しい常識」人の数が過半数を上回った瞬間、会社は変わります。組織の「常識」とはまぎれもなく、数だからです。

 

そしてその状態になると、古い常識の人も、新しい常識に少しずつ書き換わっていきます。古い常識の人は、誰に言われたわけじゃなくても「もう俺はこの会社にいらないのか?」と思うようになってくるからです。若手の活躍や存在感に押され、”差し迫った危機”を感じるのです。いつの時代も、こびりついた考え方を変えるのは「差し迫った危機」です。

 

・・・では、そういった若い人たち採用をするにはどうしたらいいのか。

・・・定着させるにはどうしたらいいのか。

 

その答えは、「給与以外の報酬」にあります。

教習所経営は高校数学で答えがでる Vol.5 〜「報酬の方程式」〜