変身活動家 江上喜郎

変身活動家・江上喜朗が不定期に更新しているブログ。事業承継に関する考察や経営ノウハウ、実際の事例などについてまとめています。書籍では書けなかった部分まで明かしていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

第20回2020年10月12日

AIで、教習所はよみがえる。

自動運転システムを開発するティアフォー社と3年ほど前より共同開発していた「AI教習システム」をリリースし、9月28日に試乗会を実施しました。予想を超える反響を頂き、テレビや新聞を中心とするメディア15社の方に来ていただき、予想以上の盛会に終わりました。交通安全教育に関する、世間の注目を窺い知ることができました。
 
 
交通事故による死者は依然として年間3000名を超えており、増え続ける高齢者関連の人身事故には歯止めが効かなくなってきています。一方で、交通安全教育のプロである教習指導員の不足は喫緊の課題となっており、2033年には35%の指導員が減ります。このままでは、死亡事故者が10万人3人以下という、世界的にも質の高い交通安全教育のインフラを維持し続けることはできません。日本の交通教育の高い質を維持し、さらに高めていく。AI教習システムは、そんなソリューションにしていきたいと思います。
 
そして教習所にとっても。
 
教習所には教習の「量」と「質」、2つの問題があります。
 
お客様である教習生は、多くが高校生や大学生。休みがある夏と春に圧倒的に集中します。モノを買うのでなく時間を使って教育を受けにくる以上、それは仕方ありません。一方教習所は、それを受け、繁忙期、指導員はものすごい量の教習をします。1日10時間、多い教習所では12時間以上教習を行います。そしてどんなに最短でもAT車で31時間はマンツーマンで行わなければいけない制約(一部の複数教習を除く)があるため、生産性を大きく上げることはできません。前述のように指導員は現時点でも不足しており、必然的に1人の指導員が多くの教習をこなすしかありません。そして1人あたりの教習時間を増やしても、限界はすぐに訪れます。すでに合宿教習所の多くは繁忙期の受入の制限が発生し(コロナ禍前においては)、そのしわ寄せは、70歳以上の高齢者の免許更新時に必要な高齢者講習や、ペーパードライバー教習、企業研修などの受入ができないなどの問題にもつながります。教習所は、指導員一人当たりの労働時間の増加、機会損失の発生、という2つの経営面での具体的な問題に直面しているのです。
 
 
そしてそれは質の問題も引き起こします。上記のように心を殺して量をこなさなければ押し寄せる教習生に対応することはできない、構造上の問題があるわけで、そうなると指導員は量をこなすことに邁進することになります。新しいスキルを身につける、経験を積む、といったことが現実的に極めてやりづらくなります。どの教習所の経営者も、繁忙期の教習指導員に、それを求めることはできないのではないでしょうか。
 
 
AIが部分的にでも教習を代替することができれば、教習所は変わります。AIは電気さえあれば無限に働きます。S字やクランクや右左折の仕方など、ベーシックな技能を教えることはAIに任せ、人間はより重要な部分(安全運転への動機付け、1対1での密なコーチングやティーチング)にシフトできます。その役割分担ができれば、教習所は、単なる運転技能を教えるだけでなく、より質の高い教育ができるようになります。
 
 
そして、社会全体にとっても。
 
AIが得意な領域と、人間が得意な領域は違います。
活版印刷が生まれることで情報を転記する仕事が考える仕事に変化し、
自動車が生まれることで、自転車を漕ぐ仕事がドライバーという新しい職業に変化してきました。
技術の進歩によって、人間は、仕事を進化(=人間にしかできないことへ変化)させています。
 
AIができることはAIに任せ、人間は人間しかできない仕事に集中していく。
それこそが世の中に良いサービスを産み、そして仕事を進化させていきます。
 
この開発を、その第一歩にしたいと思います。